整理券をスマートフォンで配りたいと考えたとき、多くの店が最初に気にするのは「お客様にアプリを入れていただけるだろうか」という点です。店の前に並んでいる方に、アプリストアを開いてもらい、ダウンロードを待ってもらい、会員登録をしてもらう。整理券を受け取るまでの手順が増えるほど受付に時間がかかり、店頭の混雑を招くことがあります。
結論から書くと、お客様に専用アプリを入れていただかずに、スマートフォンで整理券を配る方法はあります。この記事では、その仕組みと、専用アプリや紙の整理券との違いを整理します。整理券システム全体の種類は整理券システムとはで、紙からの切り替え方は紙の整理券をデジタルに切り替えるで扱っています。
「アプリ不要の整理券」の定義
この記事でいう「アプリ不要の整理券」とは、お客様が新しいアプリをインストールせずに、手持ちのスマートフォンで受け取れる整理券のことです。
スマートフォンそのものが要らなくなるわけではありません。代表的なのは、ふだん使っているメッセージアプリの中で動く整理券です。
もう1つ、言葉の範囲をそろえておきます。店にとって大事なのはインストールの有無だけではなく、整理券を受け取るまでにお客様が何回手を止めるかです。インストールが要らなくても、会員登録や氏名・電話番号の入力が続くなら、店頭での手間はあまり減りません。この記事では、インストールが要らないことを「アプリ不要」と呼び、登録や入力が要らないかどうかは別の条件として扱います。
アプリを入れずに整理券を受け取れる仕組み

仕組みの中心にあるのは、LINEミニアプリです。LINEミニアプリは、LIFF(LINE Front-end Framework)上で実行されるウェブアプリで、ユーザーはアプリをインストールしなくてもサービスを利用できます(LINEヤフー「LINEミニアプリとは」)。
流れは次の3段に分けると分かりやすくなります。
1. 入口:QRコードから開く
LINEミニアプリは、LINEの中からだけでなく、LINEの外からも開けます。パーマネントリンクをQRコードにして各種媒体に載せると、そこからアクセスできる仕組みです(LINEヤフー「LINEミニアプリとは」)。店頭のPOPや看板に印刷したQRコードを読み取ると、LINEの中で整理券の画面がそのまま開くというわけです。
2. 受付:入力を最小限にする
LINEヤフーは、LINEアカウントとの連携により氏名や電話番号などが自動入力されるため、ユーザーの負担を軽減できると説明しています(LINEヤフー for Business「LINEミニアプリ」)。ただし、何を入力してもらうかはサービスの設計次第です。整理券に必要なのは、人数と順番だけという考え方に立てば、氏名や電話番号を預からない設計も選べます。
3. 通知:呼び出しをLINEに届ける
順番が来たことは、LINEに届けます。LINEミニアプリには専用の通知機能があり、順番の呼び出しなどの重要なお知らせをLINEで通知できるとされています(LINEヤフー for Business「LINEミニアプリ」)。
この通知(サービスメッセージ)は、ユーザーの操作に対する確認や応答としてのみ送信でき、値下げやクーポンなどの広告の通知は禁止されています(LINEヤフー「サービス事業主のためのノウハウ」)。整理券の発券というお客様の操作に対して呼び出しを知らせる用途なら、この条件に収まります。呼び出しの通知そのものに宣伝を混ぜない決まりになっている点は、お客様に説明するときの安心材料にもなります。
専用アプリ・紙の整理券との違い
アプリ不要の整理券を、専用アプリと紙の整理券と並べると、違いは次のようになります。
| 比べる点 | 専用アプリ | 紙の整理券 | アプリ不要の整理券(LINEミニアプリ) |
|---|---|---|---|
| 受け取るまでの準備 | アプリのインストール(登録の要否はサービスによる) | 不要 | QRコードを読み取る |
| 店の外で待てるか | 待てる | 通知を併用しない場合は、店頭に戻って確かめる | 待てる |
| 呼び出しの届き方 | アプリの通知 | 店内の番号表示や声かけ | LINEへの通知 |
| 初めての方の手間 | 大きい | 小さい | 小さい |
| スマートフォンを使わない方 | 使えない | 使える | 紙の整理券との併用で対応 |
専用アプリは、通知やポイントなどの自由度が高い一方で、初めて来店された方にはインストールそのものが負担になります。紙の整理券は誰でも受け取れますが、通知の仕組みを併用しない場合、順番が近いかどうかを確かめるには店頭に戻る必要があります。アプリ不要の整理券は、その間に位置します。
ここで見落としやすいのが、スマートフォンを使わない方への配慮です。総務省の情報通信白書によると、2024年のスマートフォンの世帯保有率は90.5%で、端末別のインターネット利用率も「スマートフォン」(74.4%)が「パソコン」(46.8%)を上回っています。一方で、年齢階層別のインターネット利用率は、13歳から69歳までの各階層で9割を超えるものの、70歳以降は年齢が上がるにつれて低下する傾向にあります(総務省「令和7年版 情報通信白書」)。アプリ不要にしても、紙の入口は残しておくのが現実的です。
預かる情報の量も違いになります。インストールが要らない仕組みでも、会員登録や氏名・電話番号の入力を求めるかどうかは別に決めることです。整理券のように短い時間しか使わないものなら、入力の項目を減らせば、お客様の負担や不安も減らせる可能性があります。受付で何を預かるかの比べ方は順番待ちシステムの選び方で扱っています。
アプリ不要の整理券は、どう使われているか
LINEヤフーは、LINEミニアプリでできることとして、来店予約・順番待ちを挙げ、順番待ちでは呼び出し通知もLINEで完結すると説明しています(LINEヤフー for Business「LINEミニアプリ」)。LINEミニアプリの利用規模は整理券システムとはで紹介しています。
実際の店頭では、使われ方は大きく2つに分かれます。
- お客様のスマートフォンだけで完結させる:店頭のQRコードを読み取り、その場で発券して、呼び出しまでLINEで受け取る
- 店頭の発券機と組み合わせる:紙の整理券を発行し、そこからスマートフォンで呼び出しを受け取れるようにする
後者は、スマートフォンを使わない方と同じ列に並んでいただけるので、入口を1つにまとめたい店に向いています。
matoca での実例
matoca は、LINEに呼び出し通知を送れる整理券システムで、LINEミニアプリとして提供しています。お客様はアプリ不要で発券できます(matoca 公式サイト)。
お客様の手順は、整理券の使い方・ヘルプでそのまま公開しています。店に掲示されたQRコードをスマートフォンで読み取るとLINEで matoca の画面が開き、人数と、店が設定した確認項目(席の希望など)を選んで発券ボタンを押すと、整理券が発行されます(整理券の使い方・ヘルプ)。matoca は LINEミニアプリなのでインストール不要で、LINEで発券する手順に、会員登録や氏名・電話番号などの個人情報の入力はありません。呼び出しは番号で行うので、名前で呼ばれることへの抵抗や、スタッフが名前を読み間違える心配もなくなります(matoca 公式サイト)。
順番が近づいたときと、店が呼び出しをしたときには、LINEにお知らせが届きます。紙の整理券を発行する店では、整理券に印字されたQRコードを読み取って、LINEで順番を確認できる場合もあります(整理券の使い方・ヘルプ)。紙とスマートフォンの両方の入口を、1つの列にまとめられるということです。
導入した現場でも、この手軽さが評価されています。デニーズ新宿西口店・赤坂駅前店では、スマートフォンでQRコードを読み取り、案内に沿って操作するだけで受付が完了する分かりやすさと、使い慣れたLINEをそのまま使える手軽さが、複数社との商談の中で導入の決め手の1つになりました。理容プラージュ・美容プラージュでは、店頭の発券機での整理券発行と、スマートフォンでQRコードを読み込んで受け取るLINEでの呼び出し通知を組み合わせて使っています。
matoca は、導入企業390社超・導入店舗2,380店(エンハンス・スポットプランを除く)で使われています。お客様に入れていただくものを1つ減らしたいとお考えの方は、まず自分のスマートフォンで、QRコードから発券までを試してみてください。
まとめ
- お客様に専用アプリを入れていただかずに、スマートフォンで整理券を配る方法はある。代表的なのが、LINEの中で動くLINEミニアプリ
- 入口はQRコード、受付は人数など最小限の入力、呼び出しはLINEへの通知、という3段で成り立つ
- インストールが要らないことと、登録や入力が要らないことは別の条件。インストールに加えて、何を預からないかまで決めておくと、お客様の手間はさらに減る
- スマートフォンを使わない方のために、紙の整理券の入口は残しておく
