店舗や窓口の「待ち」を仕組みで捌くのが順番待ちシステムです。ただし一口に順番待ちシステムといっても、受付の仕方も、順番が来たことの知らせ方も、製品によって大きく異なります。カタログを並べて比べる前に、自店の運用をどの方式に寄せるのかを決めておかないと、導入したあとで「使われない機能ばかりだった」ということが起こります。
この記事では、順番待ちシステムを2つの軸で分類したうえで、導入前に決めておくべき論点と、業種ごとの勘所を整理します。
順番待ちシステムとは何か
順番待ちシステムとは、来店・来庁した人の順番を記録し、順番が来たことを知らせるまでを一続きの流れとして扱う仕組みです。紙の台帳に名前を書いてもらい、頃合いを見て呼び出す——という運用を置き換えるものだと考えると分かりやすいと思います。
置き換えの動機として大きいのが、受付に人を専任で置きにくくなっていることです。厚生労働省の一般職業紹介状況(職業安定業務統計)によれば、令和8年7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍、新規求人倍率は2.10倍でした。正社員有効求人倍率は1.00倍で、求人1件に対して求職者1人という水準です。この数字は全産業を通したものですが、受付に人を割けない店舗では、受付という業務そのものを減らすか、機械に任せるかの判断が必要になります。
仕組みの分類
順番待ちシステムの違いは、機能一覧を並べても見えてきません。「誰がどこで発券するか」と「順番が来たことをどう知らせるか」の2軸に落とすと、製品ごとの得意不得意が並びます。この2軸は独立していて、片方だけを変えることもできます。
軸1:誰が、どこで発券するか
受付方式は、誰がどこで発券するかで3つに分かれます。これに「予約を併用するか」という別の軸が重なります。
店頭でお客様が発券する方式は、入口に端末を置き、来店されたお客様がご自身で番号を取ります。スタッフの手はほとんど要りませんが、端末の前に人が滞留しやすく、操作に迷うお客様への声かけは結局必要になります。
スタッフが発券する方式は、人数や席の希望を聞きながら受け付けられるのが利点です。確実ですが、受付に人が要ります。
店外からお客様のスマートフォンで発券する方式は、店の前に並ばなくても順番を取れます。来店前に順番を取れるのがこの方式の特徴で、近隣への配慮が必要な立地や、ビルの上階にある店舗で効きます。
この3つとは別に、予約を併用するかを決めます。順番待ちが原則として「受付した順」で動くのに対し、予約は「決めた時刻」で動くので、両立させるには当日枠と予約枠の配分をあらかじめ決めておく必要があります。
軸2:順番が来たことをどう知らせるか
呼び出し方法も、方式によってお客様の行動が変わります。
店内の番号表示だけであれば、お客様はその場を離れられません。呼び出し機(ページャー)を渡す方式は建物の中では動けますが、機器の紛失や電池の管理が発生します。SMSは電話番号を預かる必要があります。専用アプリは通知の自由度が高い一方、初めて来店された方にはインストールそのものが負担になり得ます。
メッセージアプリの通知を使う方式は、この負担を避けられます。LINEミニアプリはLINEの中で動くウェブアプリで、追加のインストールが要りません(LINEヤフー「LINEミニアプリとは」)。再訪しやすさの点では、LINEの[ホーム]タブの[サービス]から、最近利用したミニアプリに利用履歴の新しい順で最大8件までアクセスできます。ただしこれは認証済ミニアプリでのみ利用できる機能です。
導入前に決める5つのこと
製品を比べる前に、次の5つを自店の言葉で決めておくと選定が速くなります。
- 誰が発券するか——お客様に任せるか、スタッフが受けるか、店外からも取れるようにするか
- 呼び出しをどう届けるか——その場にいてもらう前提か、離れてもらう前提か
- 待ち時間をどう見せるか——組数だけ出すか、分数まで出すか。分数を出すなら外れたときの説明をどうするか
- 無断キャンセルをどう扱うか——何分で保留にするか、保留にしたあとに声をかけるか
- 既存システムとどうつなぐか——POSレジ、券売機、予約台帳、配席の仕組みと、どこまで連動させるか
とくに3番目は運用の負担に直結します。分数を出すと見通しを持っていただきやすくなる一方、予測が外れたときの不満も生まれます。まず組数の表示から始めて、実績が溜まってから分数に進む、という順序も選べます。
業種別の勘所
飲食店は、ピークの集中度が業態で大きく違います。ファミリーレストランのように席数が多い店では回転と受付の速度が課題になり、行列のできる個店では「並ばせない」ことそのものが目的になります。商業施設のフードホールでは、複数店舗の順番をまとめて扱えるかが分かれ目です。
理美容は、スタッフの異動・交代が多い店舗では操作の簡単さが選定条件になります。予約を取らず来店順に施術するサロンでは、待ち時間の長さに加えて「あとどれくらいか分かる」ことも満足度に関わります。
自治体・公共の窓口は、来庁者が時間を選べないことが多く、事前に順番を取れるかどうかの影響が大きい領域です。総務省は自治体DXの参考事例集を公開しており、窓口の混雑緩和を含む取り組みが分野ごとにまとめられています。
物販・イベントは、限定商品の発売日など、需要が一点に集中する場面で使われます。ここは先着にするか抽選にするかの判断が要ります。
先着にするか、抽選にするか
抽選で配る方式は、事前の応募受付と来店時間の分散を組み合わせれば、開店前から並ぶ行列を減らせます。ただし応募や受け取りの時間帯に人が集まれば、そこで列はできます。一方で、当落の条件や応募期間の見せ方は表示のルールに関わります。応募条件・当選者数・当選後の案内方法は、告知の時点で確定させておいてください。抽選や先着を告知する際は、消費者庁が公開している景品表示法のページで最新の考え方を確認してください。
matocaでの実例
matocaは、LINEで順番待ちができるLINEミニアプリとして提供している順番待ちシステムで、導入企業390社超・導入店舗2,380店(エンハンス・スポットプランを除く)の実績があり、全47都道府県で使われています。上で挙げた方式のうち、店頭でのお客様ご自身の発券、スタッフによる発券、店外からの発券に対応し、紙の整理券との併用もできます。
実際の使われ方は業種によって異なります。
- ファミリーレストラン:デニーズ新宿西口店・赤坂駅前店では、グランドオープンと同時に導入いただきました
- 商業施設:虎ノ門横丁では、26店舗が入る施設で、順番待ちとモバイルオーダーを1つのLINEトークにまとめています
- 理美容:理容プラージュ・美容プラージュでは、全国600店舗以上で採用いただいています
- サロン:予約を取らないサロンでは、導入から半年で約5人に1人がLINE呼び出しを利用し、店外からの順番待ちの比率が半年で3倍になったとの報告をいただいています
- 自治体:吹田市役所では、窓口業務に順番待ちと予約の仕組みを導入いただきました
- 鉄道:JR西日本 みどりの窓口では、2024年の小倉駅を皮切りに複数の駅で導入いただいています
既存システムとの連携については、POSレジ・券売機・ECサイトと連携できるAPIを提供しているほか、自動配席AIシステムとの連携も行っています。
まとめ
順番待ちシステムを選ぶときは、機能表を突き合わせる前に「誰が発券し、どう呼び出し、待ち時間をどこまで見せるか」を決めてください。この3つが決まれば、必要な方式はかなり絞り込めます。
